アイデアホイホイ〜3分のヒマつぶし

入れて出す、3分間・・・アイデアを、だよ?

S女とM男の昼下がり~歯医者でSM?

昼下がりのことだ。 目の前の人妻は、おもむろに人差し指を私の口の中に入れてきた。 そしてこう呟く。 「この歯と、この歯ですね」 「ふぁぃ」 歯医者に来たのは何年ぶりだろう。 奥歯の磨きにくいところに、黒いシミが現れたのには気がついていた。 ただ、長野に下宿したこともあって、行きつけの歯医者から500kmも離れてしまえば、私でなくとも通う気が失せるだろう。 そうこうしているうちに大学も卒業してしまい、「あぁ学割がきかなくなった」とトンチンカンなことを思うほど医者離れが進行していた。 いよいよ口の中のシミは、「このハイチオールCでターンオーバーしてくれ」という願いも届かず、ホクロだいの大きさにまで成長したのだ。 そして完全予約制、予約三週間待ちの超人気歯医者にやってきたわけである。 予約制の歯医者というのは、待っている人がいないイメージがある。 が、さすが超人気歯医者。ここは違った。 私の前に「子どもを中学にやっている間に来ました」といった感じの主婦、「ちょっと早めの定年退職をしたんだ」的な雰囲気の叔父様がいる。 そして受付のお姉さんは28歳ぐらいで、いつもなのかこの日だけなのか、電話をかけまくっていた。 「はい、もしよろしければ、明日の11時のご予約なんですが、今日いらしてもらえることは可能でしょうか?…はい、はい、実はですね」 目の前の張り紙を見て驚いた。 院長が肋骨を骨折しまして、固定での治療となっております。どうかご了承ください… というようなことが書いてあるではないか。 「あ、そうですかぁ。ありがとうございます。では今日の2時頃お待ちしております。失礼いたしました(ガチャ)…アフロさん、どうぞお入りください」 この歯医者の人気は何なのか?何が私を三週間も待たせたのか? 挙げ出せばキリがない不安の種を、そんな疑問でだましながら治療室へと入っていった。 「はい、アフロさん、椅子を倒しますね」 驚いた。 目の前の景色が下がっていくではないか。遊園地か。 上がる感覚なしに椅子を上げられたのは、美容院でも理容室でも耳鼻科、それこそ今までの歯医者でもなかった体験だ。 これか!?これが私を三週間待たせたのか?…くだらん。 上がりつつ倒れていく椅子に体をまかせていると、視線が天井に向いた。 驚いた。 「はい、では口を開けてください」 映画『呪怨』では、寝床に入って天井を眺めた瞬間、青白い男の子が、にゅっ、とのぞいてきてそりゃぁもう戦慄ものだったが、 なんだこの美人は。 歯科衛生士さんなんだろうか? 茶色の長い髪を、巫女さん風に束ねた女性が、私のために青のアイライン、マスカラ、目元バッチリメイクで、膝枕をしてもらっているときのようなアングルから…口の中の歯を片っ端から鋭利なもので突っついていく。 これか!?これが私を三週間待たせたのか?…く、くだ…らん。 ほら、マスク外したら口裂けてるかもしれないし。 「はい、椅子戻しますねぇ。一度ゆすいでください」 言われるがまま、口を備え付けのコップでゆすぐ。 コップに水がたまる、ちょろちょろという音とともに、 後ろから歯科衛生士のお姉さんと、たぶん歯医者である婦人の声が聞こえてくる。 そういえば、紹介してくれた方が「夫婦でやっている歯医者でね」といっていたのを思い出した。 「左下67と上7、右上下7が…」 「左は7だけして、右はいいや」」 「はい。えっ・・えっと、左6でしたっけ?」 忘れかけていた不安をあおる会話が展開している。 「はい、アフロさん、今日は」 歯科衛生士のお姉さんがもう一度座って、左の7(たぶん)をチェックし去った後、婦人が頭上の椅子に座った。 婦人の声は私の歯が四本虫歯になっていると告げ、今日は左の二つを治すと告げている。 虫歯というのはそんなに早く治るものなのか。 「はい、倒しますよぉ」 目元の優しいメガネ婦人が、掃除機の小さいやつみたいなパイプを口に突っ込んできた。 すさまじい勢いでそれは、唾液を吸い込んでいく。 キーーーーーーーーーーン 「じゃあ削っていきますね♪」 口に指が入っていて有無がいえない…。 右手にドリルを持った奥さんは、語尾に♪が付いているような気がした、目が嗤っているような気がした。 キーーーーーーーーーーーーン 歯が偏頭痛、みたいな感覚がおそう。 キーーーーーーーーーーーーン 「XDTと、フラジールツー持ってきてください」 「………」 きっとドリルの音で先生の声、衛生士さんに届いてないですよ♪、といえる状況じゃない。 キ~ィィン…… 「XDTと、フラジールツー…ちょっと急いで」 「は、はい!!」 キーーーーーーーーーーーーン 「ジーボンドとメガボンドお願いします」 ついでにJ・ボンドもお願いします、なんていえない。 キ~ィィン… 「ジーボンドとメガボンドは?」 「あっ、はいっ!!」 なんと女性の多い歯医者だろう。 「少し乾かしますね」 と婦人がいって私の口の中にねじ入れたものは、SMで使う口あけたままにするサルグツワみたいなもので…そんなもので固定されながら、仰向けになったところ、ふと目の端に映ったのは、何かしら固定されたまま治療に励む、男の歯医者さんだった。 (S女とM男でヒット中♪) (すごい、「M男 体験だ」、でもヒット中だ…)